民法改正で何が変わる? vol.1
民法改正の4つのポイント
我が国で民法が施行されたのは1896年、明治29年7月16日です。これまでの約120年間、民法(債権法)は改正されることなく維持されてきました。2017年5月に「民法の一部を改正する法律」が成立、2020年4月1日から改正法の施行がはじまりました。ビジネス取引や融資に関する保証制度、不動産の賃貸借契約、事故などの損害賠償請求、残業代の請求権など私たちの生活に密接な事柄についてのルールが変わります。民法の改正ポイントは大きくわけると4つあります。
待遇差解消のための留意点 ①保証契約 ②売買、消費貸借、定型約款などの契約 ③賃貸借契約 ④損害賠償請求権(事件や事故) |
4つのポイントについて順にお伝えしていく予定です。今回の記事では「保証契約」についてお伝えします。
上限のない保証契約は無効
保証に関する契約のルールが変更になりました。保証契約とは借金や代金の支払いなどの債務を負う当事者「主債務者」がその債務を履行しない場合に「保証人」がその債務を負う契約のことです。これまでは保証人になった個人の財産、不動産や給与の差し押さえなどが裁判所の関与のもと強制されてきました。
今回の法改正で「極度額(上限額)の定めがない個人の根保証契約が無効」になりました。「根保証契約」とは「一定の範囲に属する不特定の債務について保証する契約」のことです。例えば保証人となる時点で現実にどれだけの債務が発生するのかがはっきりしてない、どれだけの金額の債務を保証するのかがわからない契約のことです。根保証契約の無効は会社や法人は含まれず、個人が対象となります。個人が保証人となる場合には「極度額」を定める必要があり、「極度額」が定まってない場合の保証契約は無効となります。
また、個人が法人や個人事業主などの事業用の融資の保証人になる場合は公証人による保証意識の確認が必要となりました。この意思確認がなく保証人契約を締結してもその契約は無効となります。ただし、主債務者が法人であり、その法人の理事、取締役、執行役、議決権の過半数を有する株主などはこのルールは適用されません。主債務者が個人である場合は共同事業者や実際に事業に従事している主債務者の配偶者も適用外です。