みんな画期的な新サービスを待ちこがれてる

7月に入ってからやっと梅雨らしくうっとうしい日が続きます。気圧が低いことで体調に変調をきたすこともある季節です。消費市場での動きで気づくことは、男性の理容室回帰現象です。大げさかもしれませんが理容業界は半世紀ぶりの大トレンドが始まる感じです。

理容室はなぜ攻勢に転じ得たか

「床屋談義」という言葉もあるように、散髪屋(理容室)で旦那衆がひげ剃りをしてもらいながら世間話にうつつを抜かすという光景は昔ながらの景色です。ところが70年代に男性の長髪が大流行したことから男性の美容室利用が増え出し、バブル経済当時から多くの男性は理容室を捨てて美容室を利用するのがあたり前という時代となったのです。男性が理容室を利用しないのは「おしゃれじゃない」「自分のイメージ通りに仕上がらない」「今時のスタイルになれない」などの理由が上位を占めていました。時代の大変化のなかで、あっけにとられているうちに取り残されて廃れていったのが理容室でした。

しかし時代が巡るなか、逆に美容室が増えすぎて一部を残して壊滅状態になりました。それを尻目に、理容室は強みを生かしたサービスに特化して積極営業するところが多くなりました。もちろん理容室の強みは「顔そり」と「育毛」ですが、これにとどまらずQBなどの「10分カット」チェーンが一世を風靡しています。さらには「男性ひげ脱毛」などの新サービスを掲げる店が出始めています。半世紀ぶりに巡ってきた理美容の逆転現象です。

マーケティングと開発力

なぜ理容室が攻勢に転じることができたのかというと、一番の要因は市場縮小が進み頑迷固陋な職人気質の理容師が引退し(お亡りになっ)たということに尽きます。世代が交代し、さらにそのなかでも旧い規範に馬鹿正直に従っていても繁栄はないから人と違ったことにチャレンジしてみようという気概をもった(5%ぐらいの)経営者によって推進されていることです。この自然の世代交代に任せるかたちで遂げた競合の淘汰、サービス革新には恐ろしく長い長い時間が空費されています。

理容室が半世紀を費やして新サービスをひねり出したのとは対象的に、エステはあっという間に新サービスの開発をやり遂げてきました。武器は市場分析(マーケティング)とメーカーサイドの新商品開発の援軍を得たことです。理美容市場が半世紀の停滞で足踏みしている間に、エステ市場ではマーケティングを武器に目まぐるしくメニュー開発が進んできました。

美顔ハンド技術からはじまり、全身ハンド技術、そして機械の助けを借りて美顔、全身のメニュー開発。エステのメニューのなかでも大きな目玉になっていた脱毛術。ワックス脱毛、電気脱毛、レーザー脱毛、光脱毛。とりわけ従来技術を凌駕するメリットをうたえる新メニューの爆発力は大きく、医業との境界問題という絞り方で眺めても、メーカーによる一歩先んじた新商品の提供があり、エステによる新メニュー開発がおこなわれ、爆発的な消費がおこなわれ、行政がうしろを追いかけるという構図でした。

脱毛というカテゴリー以外でも、新メニューとして脂肪冷却術が登場して大ヒット。行政からの指導で引き潮になると、入れ替わるように集束超音波照射術(ハイフ)などが登場して大ヒットしました。行政とはまさにイタチごっこの様相を呈してきたのです。

発想の大転換ですべてが変わる

家電メーカーとして存在感あるパナソニックが10年前に「全自動おそうじトイレ」というキャッチフレーズで自動洗浄トイレ「アラウーノ」を商品化しました。便器市場に新規参入を果たした原動力は「真に画期的な新商品だから」ということです。「トイレ掃除しなくてよいトイレ」というコンセプトはじつに強力です。それまで日本の便器市場はTOTOとLIXIL(INAX)の2強による寡占状態でしたが、そこにあえて殴り込みをかけるというからにはよくよくの自信がなければなりません。それが「トイレ掃除不要」のコンセプトに織り込まれていました。老舗の2社は脅威のライバル登場に戦々恐々となり、その後追随商品を開発するのに何年もかかりました。

エステの強みは、なんといっても最初から理美容師のように資格法で縛られた業ではないということです。売上が低迷したとしても、次の年にはまったく新しい起死回生のサービスを打ち出すことができるのです。ここを忘れるべきではありません。

ことほどさように消費者のニーズを察知して新商品に仕上げるということこそがマーケティング開発の王道です。エステ店もメーカーサイドもここが正念場です。「真に画期的な」コンセプトでメニュー開発に取り組むべきときが、今なのではないでしょうか。